MADE IN JAPANが減る中、何故車だけは国内生産で競争に生き残っていけるのか

MADE IN JAPANが減る中、何故車だけは国内生産で競争に生き残っていけるのか
現在あらゆる産業で外国製品が溢れかえるようになってきています。もちろんそれには様々な理由があります。外国で製造した方が人件費や場所代などのコストが安いということが大きいこともありますし、日本では作るのが困難なものもあります。

そうして日常生活品の多くが「外国製」になっている中で「自動車」は国内生産を続けています。これにはどういった理由があるのでしょうか?

1.日本の車は海外で愛されている

日本の車は海外で愛されている
日本の主要自動車メーカー8社が公表している昨年度(2017年度)の生産台数は前年比4.4%増しの2867万台となり、これは6年連続での増加となっています。中国を中心とするアジア圏に輸出が増大していることで三菱自動車以外の7社が過去最高の数値を出しました。

また、後程述べる現地生産を除く国内生産でも前年比5.5%増しの919万台を記録し、3年ぶりにプラスを計測しました。このように「日本での車の買い控え」「車が売れていない」などの声など吹き飛ばすかのように日本の自動車は生産台数を増加させているのです。

これは外国へ実際に行ってみると実感できます。例えばアメリカの市街地の大型スーパーマーケットなどを訪れてその駐車場を見てみると「かなりの割合で日本製の車」が駐車されているのです。「ここは日本か?」と錯覚するほどです。これは決して感覚的なものだけではありません。2017年度のアメリカでの車種別の販売台数ランキングを見てみると、
1位がトヨタ「カムリ」
2位がホンダ「シビック」
3位がトヨタ「カローラ」
4位がホンダ「アコード」
5位が日産「アルティマ」

となっています。このように上位1~5位までが日本車が独占しているのです。そしてこういった現象は今に始まったことではないのです。

あ、それ聞いたことあるよ。日本車は燃費が良いから人気なんだよね
確かに以前はそういったことが人気の中心だったね
あれ?その言い方だと今は違う理由なのかな。
もちろんそれもあるけど、違う理由も増えてきているということさ

日本車がアメリカで多く売れるというのは数十年前から起こっている現象です。このことが原因で「貿易摩擦」が起こったほどです。そしてアメリカは今でもこれを大きな問題としています。

もともと日本車がアメリカでよく売れたのは「燃費が良い」「壊れにくい」「操作性が良い」というものでした。アメリカは土地が広く、長距離を移動することもよくあります。その際に日本車の燃費の良さは非常にありがたかったのです。逆にアメリカ車の特徴と言えば「パワーがすごい」「頑丈」「燃費が悪い」というものでした。

しかし日本車がアメリカで売れ続けて数十年、もちろん「トヨタ」や「ホンダ」が日本のメーカーであることは知られていますが、すでにアメリカではそれらが「外国車」であるというイメージはなくなってきているのです。長く販売されていることがイメージの定着を起こしたと考えられています。現在のアメリカ人は「トヨタ」が外国車だから購入するなんていうことは考えていないのです。

そして欧米人とは良い意味でも悪い意味でも「ドライ」です。良いと思えば購入するし、良くないと感じたらすぐに購入をやめます。その欧米人、特にアメリカ人が燃費が良いだけでいつまでも日本車を購入したりはしません。他にも理由があるのです。それが「機能性」「操作性」「デザイン」です。

例えば、昨年アメリカでもっとも販売されたトヨタの「カムリ」ですが、そのスポーティで洗練されたデザインはアメリカで発表され、予約が開始されると瞬く間に大量の予約が入ったことで有名になりました。その斬新なデザインはアメリカ人の心をしっかりとつかんだのです。そしてそれだけのデザインを誇りながら抜群の運転環境、操作性はさらに向上しているのです。つまり現在の日本車の人気は燃費が良いというような理由だけでなく、単純にそのデザインが評価されているということも表しているのです。

また、「日本の製品は壊れにくい」というのはすでに世界中で知られています。もちろん車のその一つで、日本で使用されなくなった自動車、バス、トラックなどが海外で走り続けているということがそれを物語っています。とにかくパーツさえ修理できれば、30万kmでも50万kmでも平気で走ります。このような車は日本車以外にはほとんど見られません。長年かけて作られた日本車のイメージが、現在でも日本車が生産され続ける根拠となっているのです。




2.日本では外国の車は売れないのか

日本では外国の車は売れないのか
昔から日本ではお金持ちは外車に乗っているというイメージがありました。どこの性能が良いなどの細かいことはおいて置いて、「高い」というイメージだけが先行していたのです。しかしそれもトヨタが高級車「レクサス」「プリウス」などを販売し始めたことで大きく変化しました。これらは高級なだけでなく、操作性が良くしかも環境のことを考えているという効果までついています。そしてこれらの車は海外のセレブにも広がりました。今では海外のセレブがレクサスやプリウスに乗っていることは自然となりつつあります。まず一つがこの理由です。

アメリカの大統領がもっとアメリカの車を日本は買えって言ってるね
それは昔からだね。でも日本ではアメリカの車はあまり売れないんだよ
それは性能が理由かな?
まあ、それだけじゃないんだけどね。色々と紹介してみようかね。

まず昔から言われてきた理由が、「そもそもアメリカ車は日本の国土に合わない」ということです。アメリカ車は「パワーがある」「大きい」ということでしたが、日本は道路も狭く、それほどスピードを出すことがあまりありません。夜中の高速道路くらいでしょうか?また、細い路地などでは大きいアメリカ車は不便でしかありません。操作性も悪いために満足に駐車すらできないこともありました。

さらに「頑丈」ということですが、銃社会のアメリカでは車が銃の盾となることがあり、頑丈であることが求められたのです。しかし日本ではそのような銃撃戦などそうそう起こりません。事故に対する頑丈さは必要ですが、銃弾を通さないような頑丈さは必要なかったのです。こういった理由からアメリカ車が日本では売れなかったのです。

しかし日本で海外の車がまったく売れていないというわけではありません。現に、ヨーロッパ車であるメルセデス・ベンツ、BMW、ポルシェ、フェラーリなどは一定の台数を販売しています。これは日本が輸入する自動車に関税をかけていないということも影響しています。アメリカとヨーロッパの間では関税はかけられているのです。

これには日本での販売努力が関係していると言われています。日本では「おもてなし」「情の深さ」「丁寧なアフターサービス」はもはや当然と考えられています。例え商品が良かったとしても愛想が悪く、サービスも悪い店では商品は売れないのです。

その点、BMWなどは日本でのビジネススタイルを積極的に導入していると言われています。東京オリンピック会場の近くにオープンしたBMWの販売店では、それが顕著に表れています。店に入ると広々とした空間にカフェスペースも設置され、店員に自然に挨拶をされます。

車に関して質問したい際も、昔は「買うのか買わないのか」をストレートに聞くスタイルだったのが、ゆっくりとした説明で決して「売ろう」と焦らない雰囲気に変えてきています。子供向けのイベントなども行われており、サービス精神を感じさせる接客となっているのです。

また、車自体にも工夫がされています。道路や駐車スペースが狭い日本に合わせて、他の国で販売されているよりも少し車体が小さく設計されています。こうした細かい工夫とサービスによってBMWは安定の販売実績をあげているのです。

残念ながらアメリカ車のディーラーに行ってもこういったサービスはほとんどありません。「買うか、買わないか」を迫られ、購入したとしてもその後のアフターサービスは皆無です。「販売した時点」でビジネスが終わったとされるために、故障などがあっても親切なサービスを期待することができないのです。日本ではこういったビジネススタイルでは厳しいのは間違いありません。

3.国内生産と現地生産

国内生産と現地生産
これまでに述べたように日本に対して車の輸出、輸入、生産、販売などで否定的な要求をしてくるのはほぼアメリカだけとなっています。そして約30~40年前に起こった貿易摩擦によって新しい展開を迎えたのが「現地生産」というスタイルです。

アメリカが日本からアメリカに対しての貿易黒字を非難し、日本車のアメリカへの輸出に対して非難を加えたことから、日本の自動車メーカーは「現地生産」スタイルを取るようになりました。これはアメリカに生産工場を建て、安い労働力を使って車を生産し、完成した車をそのままアメリカで販売するというものです。このスタイルによって様々なメリットが生まれました。

まず日本だけでなく世界各地に販売していくとなると国内生産だけでは生産量に限界があります。しかし海外にも生産拠点を作ることでそれを解消することができたのです。また、現地で生産するために現地の特色に合わせた車を作りやすくなりました。

さらに現地で雇用をすることで現地での企業のイメージを向上させることができたことに加えて、雇用された人たちが日本車を購入しやすいという流れも作り出しました。そして輸出にかかる輸送費用も大幅に削減することに成功しました。もちろん輸出していないので関税もかかりません。現地生産することでこれらのメリットを手に入れたのです。

なんだ、良いことだらけだね。じゃあ全部現地生産にすればいいのに
まあ、良いこともあるんだけどね。良くないこともあるのさ
なんで?外国で作って売った方がもうかるじゃないか
「空洞化」という言葉を聞いたことがないかい?全部海外で作ることになったら日本で仕事することが減ってしまうのさ

現在、現地生産スタイルはさらに変化を見せています。アメリカやヨーロッパでは土地代や人件費が向上してきたためにさらにそれらが安い中国、東南アジア、中南米などに生産拠点を作って、そこで生産したものをそのままアメリカやヨーロッパに輸出するという方法です。この方法によってさらに生産コストを抑え、安定して販売をするという方法を取っているのです。

しかしこれらの方法は国内に「空洞化」という結果を招きました。様々な製造関連の企業が安い生産コストを求めて中国や東南アジアに生産拠点を移したことで国内の生産量が低下し、労働者が雇用を失うという状況を生み出しました。もちろん企業にもそれぞれの戦略や事情があるためにそれを阻止することはできないのですが、その空洞化は深刻になってきているのが実情です。

それは日本の土地代や人件費が高いということも理由になっています。東京や大阪の大都市で大規模な工場を営業するほど広大な土地があれば、それを売却したり貸し出したりすることで大きな利益を生むことができます。それは工場で営業するよりも大きなものになることがあるのです。

そしてそれは自動車関連企業にも影響してきています。実際に2000年には日本では国内で約600万台の車が生産されていましたが、2015年にはそれが約500万台に減少しています。

ただ、これにもさまざまな側面があるために一概には言い切れません。そもそも国内では若者の「車離れ」や都市の電車やバスなどの交通インフラが整備されたことによって車の必要性が薄れています。そのためにすべてを国内で販売しようと考えると無理が出てくるのです。はじめに述べたように日本車の「生産台数」「輸出台数」は増加しています。そう考えれば現在のスタイルはうまくいっているということになるのです。

そして日本国内で製造される自動車の質の高さは他の追随を許していません。また、国内で労働している人のおよそ1割が自動車に関連した労働をしていると言われています。こういったことが日本国内で自動車を生産していくことの理由であり、根拠となっているのです。他の日常生活品は海外製品が増えてきている実状は確かにありますが、自動車に関してはこれからもそのビジネススタイルに大きな不安や影響はないとされているのです。