期間工は労働組合に加入している?実情を分析

期間工は労働組合に加入している?実情を分析

トシコさん,労働組合って知ってる?
藪から棒にどうしたの?
テレビを見ていたら,2018年の春闘が始動したというニュースをやっていて,その中で労働組合のことも取り上げていたんだ。僕も期間工として働いているけれど,労働組合がどういったものか,そもそも僕たち期間工が労働組合に入っているのかどうかもよく分からなくて…
ああ,そういうことね。確かに期間工には労働組合はあまり馴染みがないかもしれないわね。でも全く関係ないこともないのよ。
そうなの?
じゃぁ期間工と労働組合の関係についてちょっと調べてみましょうか。

1.労働組合とは?

労働組合とは?
労働組合を一言で説明すると,「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善その他経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体又はその連合団体」ということになります。日本国憲法28条では「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する」と規定されていて,労働者の働く権利が保証されています。

憲法で保証されている労働者の権利とは,
① 労働者が団結する権利(団結権)
② 労働者が使用者と交渉する権利(団体交渉権)
③ 労働者が要求実現のために団体で行動する権利(団体行動権)
の3つがあり,この権利を正しく行使するための「手段」が労働組合にあたります。

もう少し分かりやすく説明しましょう。あなたが働いている会社の給与や待遇に関して文句があったとしても,一人で会社と交渉することは普通できませんし,仮に交渉できたとしても意見が通ることはほとんどないですよね?でも,社員の大多数があなたと同じ意見だとしたらどうでしょうか?

みんなでまとまって会社にお願いすれば,その意見は尊重されるかもしれません。このみんなでまとまって意見を集約することが,①団結権であり,会社と交渉する権利が,②団体交渉権,そしてその交渉のためにストなどを含めた行動を取ることが許されているのが,③団体行動権,というわけです。この労働者の権利は憲法で保証されているものであり,団体交渉を会社側が拒むと憲法違反にあたります。ですから労働組合とは,働く人が自分たちのために会社と交渉する組織ということができます。

会社側と行う交渉条件は主に労働条件の改善,賃金の引き上げ,ボーナス交渉などがあります。労働者一人ひとりでは弱い立場でも,皆で団結して交渉すれば会社側としてもその意見を無視することはできません。働く人が,自分の働く環境をより良くするためのシステムが労働組合というわけです。

その労働組合には大きく分けて社内労働組合と社外労働組合があります。社内労働組合はその名の通り,会社内にある労働組合のことを言います。労働組合の担当者も同じ会社の従業員。同じ会社で働く仲間ですから,会社の実情をよく知っている一方,会社に対してあまりムチャな要求をすることは出来ません。会社が存続出来なければ困るのはみな一緒だからです。

一方,会社とは関係ない外部の労働組合が社外労働組合(合同労働組合とも言います)。主の中小零細企業など,社内の労働組合を持たない会社の従業員が,個人でも加入できる外部の組合で,社内労働組合と同じように,労働者に代わって会社側との交渉にあたります。一般的に,社外労働組合の方が会社側と強く交渉に当たることができるので,社内労働組合に加入している人でも,社外労働組合に加入し,会社側に意見をぶつけるといったことも当然ありえます。

なるほど,つまり労働組合というのは働く人の権利を守ってくれる組織なんだね。
そうね。一人ひとりの立場は弱くても,皆で団結すれば会社と戦うことができるわね。
でも実際に会社と交渉して何かが変わるなんてことがあるのかなぁ?
労働組合は労働者のためにキチンとした役割を担っているのよ。例えばこんな事例があるわ。



2.労働組合で本当に働く環境は改善される?

労働組合で本当に働く環境は改善される?
働く人がより良く働くために,会社側と交渉にあたるのが労働組合。では,その交渉によって実際にどのような改善がなされてきたのでしょうか?

例えば,期間工として働く工場などの現場では,始業前に点呼や朝礼,体操を行うことがありますし,就業後に掃除や片づけを「業務」として行うところが多くあります。しかし,厳密に言ってこれらは全て法律違反です。

会社からの業務として命じられている事柄は,朝礼や体操,掃除なども含めて全て労働時間としてカウントされなければなりません。つまり,給与の対象となるのです。こうしたサービス早出や残業の実態が労働組合に報告され,会社と交渉を行った結果,必要な事柄は全て「業務時間内」に行われるようになった工場は数多くあります。労働組合の働きかけによって,働く人の労働環境が改善されたわけですね。

そして冒頭にもあった春闘。毎年ニュースでも取り上げられていますが,賃金の上昇などの交渉もほとんど労働組合が行います。このように,労働組合は現場で働く人のために実際に多くのことを行っているのですが,では期間工はどうでしょうか?法律的には,正規・非正規に関わりなく,働く人は全て労働組合に加入することができます。

しかし実際には,期間工を含め多くの非正規雇用者は社内の労働組合に加入出来ていないケースがほとんどです。そうした期間工を含めた非正規雇用者の声を代弁するために,企業の枠を超えて非正規労働者を組織する合同労組(ユニオン)のような社外労働組合の存在が改めて見直されてきているのです。

そうか,労働組合は実際に働く人の役に立っているんだね。
そうね。春闘ばかりに注意が向くけれど,労働環境を含めて,労働者の声を実際にくみ上げている労働組合もたくさんあるわね。
でも僕たち期間工にはあまり関係ないかなぁ…。
そんなことないわよ。労働組合はヨネスケのような期間工員にもちゃんと関わってくる話なのよ
本当?
じゃあこれから,労働組合が期間工とどう関わっているのか,実情を見てみましょうか。

3.期間工と労働組合の実例その1,トヨタ自動車編

期間工と労働組合の実例その1,トヨタ自動車編
先ほども述べたとおり,期間工員を含めた非正規労働者は社内労働組合に加入できないことがほとんどです。しかし,日本を代表する大企業,トヨタ自動車では事情が少し異なります。トヨタ自動車では一定の条件をクリアすると,期間工員でも労働組合に加入することができるんです。それが「シニア期間従業員」制度です。

トヨタで期間工が1年以上働くと,シニア期間従業員と呼ばれる立場になります。それに伴い,日給が1000円アップ,満了金の増額,契約満了日の変更など様々な待遇改善がなされますが,労働組合への加入もその一つです。シニア期間従業員になることによって,労働組合への加入が義務となり,月額1000円の労組費が徴収されるようになります。組合に加入しないと契約更新がなされないそうなので,全てのシニア期間従業員は労働組合に参加することになります。

では,期間工員が労働組合に加入することによってどんな恩恵が得られるのでしょうか?例えば昨年の2017年の10月から,トヨタ自動車は期間工員を対象に忌引などの特別休暇制度を導入しました。トヨタの特別休暇制度では,近親者(妻や親など)の弔事や妻の出産などで会社を休む場合,通常の有給休暇ではなく,特別休暇として給与の90%が支払われます。もちろん,期間工員にもこれまで有給休暇制度などはありましたが,特別休暇制度の対象外でした。

これまで正社員やパート従業員にも認められていたこの特別休暇制度が,労働組合の要求の結果,非正規従業員の処遇改善の一環として,期間工員にも適用されるようになったのです。また給与のベースアップも行われています。

トヨタ自動車は2017年の春闘における労使交渉の結果,正規従業員だけではなく,期間工員の日給を引き上げることも決定しました。その額は日給ベースで1日当たり150円,月額で3000円ほどの引き上げになります。金額的にはわずかに思えるかもしれませんが,実はトヨタ自動車が期間従業員の日給を引き上げたのはこれで4年連続。今年の春闘での給与引き上げにも期待が持てそうです。

このように,1年以上働くことという条件こそあるものの,期間工にも労働組合の門戸を広げているトヨタ自動車。そして実際に待遇面や給与面でも改善がなされています。特に特別休暇制度などは,他の企業では期間工員に対してほとんど行われていません。さすがは世界のトヨタといったところでしょうか。

4.期間工と労働組合の実例その2,日産自動車編

期間工と労働組合の実例その2,日産自動車編
日産自動車には期間工が加入できる労働組合の取り決めはありません。そのため,何か問題がおきた場合には外部の労働組合やユニオンに助けを求めることになります。

例えば,2009年に起きたリーマンショックによって引き起こされた,「100年に一度」の不況を理由に,日産自動車グループは8000人の非正規労働者(期間工)の大量雇い止めを行いました。その雇い止めは不当とし,派遣・期間労働者5人が雇い止めの取り消しを求め,裁判をおこすことになりました。それに対し2015年,高等裁判所は原告の訴えを退け,日産自動車の行為を免罪(非はない)とする判決を言い渡します。

その判決を不服とし,期間工員側は最高裁判所に上訴をおこし,現在も引き続き係争中となっています。こうした企業に対する訴え,裁判は当然ですが個人で出来るものではありません。本案件に関しては,神奈川労連(神奈川県労働組合総連合)という日産自動車外部の労働組合が全面的に期間工員をバックアップし,法廷闘争を繰り広げています。それはやはり労働者の地位と権利を守るため。

このように,働く企業内に労働組合がない場合でも,外部の労働組合を頼ることによって,自分たちの言い分をハッキリと伝えることが出来るのです。期間工員だからといって,企業の不当な扱いに関して黙っている必要はないんですね。

5.期間工と労働組合の実例その3,ホンダ編

期間工と労働組合の実例その3,ホンダ編
ホンダの労働組合は会社に対する影響力が強いことでよく知られています。ホンダの工場で期間工や派遣で働いたことがある人ならよくご存知だと思いますが,ホンダの各工場では終業前後のサービス早出や残業がほとんどありません。さらに正規の残業自体も必要最低限度です。

これは,不当なサービス残業や不必要な残業に対してホンダの労働組合が声を上げ続けたためであり,結果として従業員の労働環境を守る意識が会社内で徹底されています。こうした労働組合の働きは当然,期間工にも大きなメリットを及ぼします。誰でもお金にならない労働なんてしたくないですもんね。

ホンダで期間工として働く人は,労働環境を守る意識の強いホンダの労働組合の恩恵にあずかっていると言っていいでしょう。しかし,残念ながらホンダ社内には期間工員が直接加入できる労働組合は存在しません。代わりに期間工員の権利を守るための労働組合が「ユニオンみえ・ホンダユニット」です。

この組合はユニオンと名乗っているとおり,ホンダ社内にある労働組合ではなく,「ユニオンみえ」という三重一般労働組合。三重県内の労働者が個人として加入できる労働組合です。その外部の労働組合にホンダ専用の「ホンダユニット」という組織を立ち上げたのは,やはりリーマンショック以来の「非正規労働者の雇い止め」に対抗するためです。

ユニオンみえも他のユニオンと同じように,業種に関わりなく個人で加入できる組合で、ホンダ労働組合と同じように会社と対等に交渉する力を持っています。ホンダで期間工として働く人が何かあった時には,ぜひこうした情報を思い出してくださいね。

6.期間工と労働組合の実例その4,マツダ編

期間工と労働組合の実例その4,マツダ編
マツダで6ヶ月期間工として働き,初回契約を更新すると,マツダの労働組合に加入することが出来ます。契約更新と労働組合への加入はセットになっており,加入を拒否すると契約更新はなされません。トヨタとよく似ていますね。強制加入とはいえ,労働組合に加入するとやはり色々なメリットを享受することができます。その一つがボーナスの増額です。

通常,期間工のボーナスというと満期慰労金のことを思い浮かべるかもしれませんが,マツダでは期間工にも夏季と冬季の2回,ボーナスが支給されます。もちろんその額は正社員と比べると微々たるものですが(働いている期間がそもそも違いますしね),名目は何であれ,支給されるものは嬉しいですよね。そのボーナスの額が労働組合に加入することによって,何と2倍以上になるんです。他にもマツダが提携する各施設で利用できるクーポンの支給や,福利厚生の利用など,労働組合に加入することによって得られるメリットは大きいと言えるでしょう。

一方,労働組合に加入することによって毎月800円の組合費が徴収されるようになります。とはいえ,非正規の期間工員でも労働組合に加入でき,何か問題が起きたときだけではなく,実際にこうやってその恩恵にあずかれることはとても素晴らしいことですね。ぜひ,他の企業にも見習ってほしい点ではないでしょうか。

7.期間工と労働組合の実例その5,いすゞ自動車編

期間工と労働組合の実例その5,いすゞ自動車編
現在,大手自動車メーカーで非正規労働者である期間工員が参加できる労働組青を持つのは上で述べたトヨタとマツダだけであるため,いすゞ自動車にも期間工員が参加できる自社の労働組合は残念ながら存在しません。当然,有事の際には外部の合同労働組合やユニオンに頼ることになります。

2008年に,いすゞ自動車が国内の工場で働く非正規雇用の従業員全員の契約更新を打ち切ることを表明した際には,工場がある栃木県内の労働組合がいすゞ自動車側との団体交渉にのぞみました。その後,いすゞ自動車の雇い止めは社会的にも大きなニュースになり,栃木県内だけではなく,全国各地で非正規労働者が労働組合を結成し,会社側と全面的に争うようになります。8年間に及ぶ法廷闘争の結果,2016年12月にいすゞ自動車との合意が成立し,全面解決を見ることができました。

8年という長い年月の間,会社との交渉や法廷闘争を行い,期間工員を励まし続けたのがJMIU(全日本金属情報機器労働組合)です。社内,社外に関わらず,自分たちの声をしっかり拾い上げ,代弁してくれる労働組合の存在は確かに大きいものがありますね。

ふえ~。一口に労働組合と言っても,様々な形があって,それぞれが色々な働きをしているんだね。
そうね。自社内の労働組合だけではなくて,ユニオンのような外部の労働組合も大きな存在となっているわね。
特に僕たちのような期間工はただでさえ立場が弱いから,こうしたところが助けになってくれると思うと心強いや。
本当にそうね。こういった組織があるからこそ,安心して働けるという側面があることは忘れてはならないわね。
よお~し,僕も今年一年気持ちを新たに,頑張って期間工として働くぞ!
8.まとめ

いかがでしたか?労働者の権利を守るための労働組合という組織が,どういったものかご理解いただけたでしょうか?非正規の期間労働者として働く期間工は,正社員と比べてもさらに弱い立場で働かざるを得ません。

そんな期間工員が自分たちの権利を守るためにも,こういった労働組合の存在は大きのではないでしょうか。働き方改革が叫ばれている今だからこそ,自分の立場をしっかりと守るためにも,こうした労働組合の存在をしっかりと活かしていきたいですね。